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LINEやポケモンGOの通信無料化の裏にあるもの IIJmio Meetingでゼロ・レーティングについて聞いてきました

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以前に、LINEやポケモンGOなどの特定のアプリの通信を無料にする「ゼロレーティング」について書きました。

この中でもIIJでのゼロレーティングについての考えに触れていますが、10月22日に開催されたIIJmio Meeting 13でIIJとしてのゼロレーティングについての考えについて発表があり、ゼロレーティングにまつわる問題も含め、だいぶ理解することができました。

詳しいスライドの資料などは下記「てくろぐ」で公開されています。

ゼロレーティングに係る3つの問題

ゼロレーティングとは?

そもそもゼロレーティングとはなんぞやという話ですが、これは、「ある特定のアプリや通信先との通信に係るパケットのみを選別して無料化するようなサービスの総称」ということです。

事業者により、「カウントフリー」だったり「ノーカウント」だったりと名称は様々で、海外では「スポンサード・データ」とも言われています。

先にも書きましたが、LINEやTwitter、ポケモンGOなどの通信を無料にするというサービスのことですね。

1.通信の秘密

ゼロレーティングに係る問題の1つ目が、「通信の秘密」です。

平たく言うと、誰とどんなやり取りをしているか第三者に知られない(通信事業者にさえも!)権利があるというもので、日本国憲法でも、

  • 第21条第2項 検閲はこれをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない

と定められています。

しかし、通信事業者は、誰充てなのか知らなければメールも処理できなかったりするので、当然通信の内容はある程度知ることになります。
これについては、「法令又は正当な業務による行為は罰しない」という規定が刑法にあり、普通に通信事業としてデータの内容を知ることは許容範囲と考えられているそうです。

また、正当な業務行為に該当しなくても、通信当事者(私たち利用者のこと)の有効な同意があれば、当事者の意思に反しない利用である限り、電気通信事業者(docomoやIIJといったキャリア)が通信の秘密を侵害することが許容されいるとのこと。

ここで問題になるのが、ゼロレーティングは正当な業務の範囲内と言えるのか、有効な同意とは何か?という点です。

ちなみに「有効な同意」とは、「契約書に書いてある」「ホームページに記載がある」ではダメで、「個別」かつ「明確な」同意である必要があるそうです。

LINEモバイルでは、申し込み時に

カウントフリー機能とは、一定のデータ通信をデータ通信利用容量の対象外とする機能をいいます。
当社は、カウントフリー機能に係る業務をMVNE(仮想移動体サービス提供者)に委託しており、MVNEは、カウントフリー機能の実現のために必要最低限のデータ(IPアドレス、ポート番号、パケット内容のうちヘッダの一部(テキスト、動画、画像等のデータ内容含まない部分))を機械的及び自動的に識別することで、カウントフリー対象を識別しております。

というのに同意することになっていますが、これでは不十分で、もっと明確に「こんな方法で、こんな範囲で、こんな内容を調べますよ」というのを開示しなければダメみたいです。

2.ネットワークの中立性

2つ目がネットワークの中立性。

これはわりとシンプルな考え方で、「通信事業者はインターネットにおけるすべてのデータを公平に扱うべきという概念」です。
特定のアプリなどを贔屓するなということですね。

特定のアプリやサービスを贔屓すると、利用者の体験(体験機会)を損ねるという考え方です。

ただこれについては法規制や罰則があるわけではなく、議論の余地が大きいとのこと。

例えば、LINEモバイルがLINEを優遇したり、DMM MobileがDMMの動画サービスを推す場合はどうなんだ?という話もあります。

3.利用者間の公平性

3つ目が公平性について。
これが一番分かりやすいですが、通信を無料化した場合、その費用は誰が負担するのかという話です。

回線の契約者全員が同じサービスを利用しているのなら問題はないのかもしれませんが、ポケモンGOの無料化などは、ポケモンGOをプレイしていない人にとっては関係ない話どころか、他人の通信費まで負担しているということになってしまいます。

ただし、そのサービスの提供者(ポケモンGOならNiatic)がサービス促進のために通信費を負担するので無料で提供してほしいという話をキャリアに持ってくる、という場合はこの限りではありません。

まとめ IIJとしてはゼロレーティングは行わない

そんな感じで、上記3つの問題の観点から、IIJとしてはゼロレーティングは現状では行う予定はないということです。

ただ、どこかのサービスの提供者が費用を負担するので・・・と持ち掛けてきたら検討はするとのこと。
その場合でも、契約者には個別に明確な説明を行い、有効な同意が得られた場合にのみサービスを提供するとのことです。

なお、IIJをMVNEとするMVNO業者からゼロレーティングを行いたいという話が出てきたら、相談に乗りつつ一緒になって検討するとも言っていました。

単純に「LINEやTwitter、Facebookの通信が無料になるんだ、やったね」とか思っていましたが、いろいろと考えることは多いということですね。